占冠エゾシカ原皮発送の落とし穴
村内で捕獲されるエゾシカは年間約300頭ほどであるが、その全てが良好な状態で処理場に搬入される訳ではなく、銃痕や擦り傷など革製品の原皮として使用に耐えうるものは逆に希少なため、今回の事業で使用するエゾシカ原皮は叶Xのかりうどの協力により、質の良いものを選別し事前に確保を進めていた。
当村のエゾシカ原皮は道内の皮処理業者が不定期ではあるが回収に来るため無償で譲渡していた経緯がある。このことから、今回の本事業で使用する原皮についても業者に回収いただき、特別に「占冠エゾシカ革」として他地域の原皮を混入させることなく加工していただこうと想定していた。しかし予定していた業者の回収が見込めなくなったことから他の搬送方法を模索したが、回収を見込んで冷凍保管していたため、業者輸送に適したサイズで保管していなかったこと、また業者輸送の場合、輸送中冷凍が融けた場合、他の荷物を汚損し賠償責任が発生する恐れが示唆されたことなどにより、保管いただいていた叶Xのかりうどが直接搬入することとなった。
このように、エゾシカ革の製品化はなめし皮を成形・縫製して製品となる訳ではなくエゾシカの捕獲時から始まっており、捕獲方法・処理場への搬入方法、また過程の保存や輸送についても製品の良否を左右させる大切な工程であることが、本事業に着手して気づかされた点である。
特に村内で鞣しや染めの技術を持たない当村でのエゾシカ製品化は、捕獲・解体から搬入までの工程を適切に円滑に進めることが必要で、今後の大きな課題となっている。
あわせて受け入れる皮加工施設の稼働最低枚数が大きく、占冠村エゾシカ革のみを単独処理した場合、コストが非常に高くなることも今後検討しなければならない課題と考える。
事業を進めれば進めるほど壁が立ちはだかってくるという印象である。
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