株式会社中村千之助商店(製品製造委託先との打合せ)関係施設等視察
と き 平成28年2月15日(月)・16日(火)
参 加 者 山本 敬介(委員長)
細谷 誠(試作品作成担当)
高橋 勝美(原料供給者)
浦田 剛(エゾ鹿対策担当)
平成28年2月15日(月)
東京都台東区浅草にある株式会社中村千之助商店(NAKASEN)さんは創業90年以上の老舗。
本社4階にあるショールームで、中村社長からまずは生皮が製品になるまでの革の加工を、順を追って詳しく解説いただきました。
中村社長は牛や豚など様々な革を加工販売する革のプロで、鹿革については北海道のエゾシカのみを扱っています。鹿革や鹿角を使った製品を見せていただき、たくさんのヒントをいただきました。
鹿角は大きさが不揃いなので、ボタンに使うのは難しいのですが、こうしてワンポイントにするには雰囲気がぐっと出てもってこいです。熱を加えて削ると臭いが強いのですが、製品になると一切臭いもなく素敵です。
2枚目の写真は今回の占冠事業と同じく、エゾシカ皮をタンニンでなめし着色した革。エゾシカ革のやわらかさ、軽さを活かしながら、自然の風合いも残した仕上げになっています。エゾシカの革は、家畜の牛や豚と違って、生きていく上で出来た傷や狩猟時の傷が突いていることが多いのです。これを特徴と捉えて、ナチュラルさをストーリーと共に製品にできたら素敵ですね、と話しました。
夕方までびっちりと研修をして、お腹がへったので、占冠の鹿肉を扱ってくださっているお店を訪ねました。JR神田駅南口すぐの「ももんじ屋」さんです。店長は2回占冠にも来ていただいており、エゾシカの素晴らしさをしっかり勉強してお店で出してくださっています。この鹿串は結構ボリュームがあって1本200円とリーズナブルです。焼き具合もグーでした^^
占冠のエゾシカ肉を東京で食べる。エゾシカも再会を喜んだでしょう。中村社長や社員の村上さんにも好評でした
平成28年2月16日(火)
翌日は朝からスカイツリーのビル5階で行われていた「MATAGI展」を見に行きました。本州の鹿、猪など野生獣の革や角を使った全国のクラフトがたくさん並んでいました。デザイン完成度のすごく高いもの、開発途中のもの、ネーミングがユニークなものさまざまでしたが、さまざまな発想や色の展開などとても参考になりました。ただし質の高いクラフトはやはり質の高い職人技が必要ですから、地域にそういった職人が根付けるような環境づくりを、少しずつ進めていくことが必要だと感じました。一朝一夕にはいきません。
5枚目の写真はMATAGI展のワークショップのコーナー。スローフードの仲間がたくさんいる岩手県の岩泉町の鹿革を使って、東京の大学生が商品開発しています。1500円でノートにつけられるユニークなペンケースを購入すると、自分でローマ字と数字を刻印できます。開発した女子大生からレクチャーを受けながら浦田さんが刻印に挑戦しています。
ふたたびナカセンさんのショールームで更に詳しい打合せをした後に、今度は革の裁断工場を見学させてもらいました。浅草の一角には革製品にまつわる工場や卸が多く集まっていて、必要な製品、例えば靴底のラバーや、革製品に使う金具、接着剤などがすぐ手に入るということです。裁断工場もいくつもあるようでした。この工場では金属製の型(この型も専門に作る工場がある)を使って、皮が無駄にならないようにひとつひとつ抜いていきます。また、ロゴを焼きや金箔で入れるのもこちらの仕事で、職人仕事を垣間見せていただきました。
6枚目の写真は浅草から車で30分ほど、足立区にある染革工場です。このあたりには昔は染革工場が多くあったそうですが、多くが大型化して郊外に移転し、今ではこの辺りにはこの一社のみだそうです。社長は30年前のままの機械でやっているので、今では最新型の工場にはかなわないとおっしゃっていましたが、エゾシカのようにロットが少ない製品を頼むにはこうした小さな工場が大切です。
7枚目の写真は染色用のドラム。中に革を入れてゴロンゴロン廻します。シカ革なら約70枚が1ロット。これでも小型の部類とのこと。立派な木材でできています。
8枚目の写真は革の面積を測る機械。確かに革は面積がまちまちなので、大きさを測るのは難しそうです。今では最新式のものもあるようですが、このアナログな機械がそれに劣らず正確だそうで、もうほとんどこの機械を使っているところはないそうです。見た目もチャーミングな機械でした。ちなみに革は1DS(1デシ)〜という単位で、10cm×10cmの正方形=1DS(1デシ)です。
9枚目の写真は革を乾燥させるための機械。こちらも形や大きさが様々な革をうまくとめられるようになっています。
今回の視察では、さまざまな革加工品を見たり、加工の工程を見られたことも大変勉強になり、今後に役立つものですが、何より革の専門家である中村社長と長時間にわたって情報交換できたことが意義あるものでした。社長には占冠にもお越しいただいていますが、今回お話させていただいたことで、自然の循環を守る取り組みとしてあえて難しいエゾシカの革に取り組む社長の思いをお聞きできました。占冠には確かにエゾシカの革や角といった資源が存在しているのですが、それらを安定的に活用し、クラフトなどの製品にしていくには、様々な方の技術と安定供給できる仕組みがなければなし得るものではありません。今回の視察を通じて、そうした人と人とのつながりと信頼関係が何より大切だとあらためて感じました。実り多い研修となりました。
10枚目の写真は、タンニンでなめした占冠のエゾシカ革を見ながら、状態を確認して、染め色などの相談をしている所
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